ブログ版 フットハットがゆく!
『フットハットがゆく!』はMK新聞連載中のエッセイです


僕はサッカー日本代表のセンターフォアードとして選ばれました。


僕はサッカー日本代表のセンターフォアードとして選ばれました。

ただし、43歳、高血圧で走れない、という選手なので、話題性抜群でした。


試合の相手はどこかの中東の国で、その試合に勝った方がW杯出場するということで、ものすごい白熱しておりました。

本田くんが右サイドから何度も切れ込んでチャンスを作るも、決め切れずにスコアレスドローの状態が続いていました。


そこで後半も残り五分というところで、僕がスーパーサブ的に投入されました。

けど、なんせ43歳高血圧で走れない選手なので、ドーンとセンターフォアードらしく、どセンターに突っ立っておりました。

そしてロスタイムに入ろうかというとき、本田くんがものすごい優しいパスをくれました。

ここからは、まるでスローモーションのように時間が進みました。

ゴールは真正面、距離10メートル、相手の屈強なディフェンダー三人が僕のシュートコースに立ちはだかり、感覚的に、打っても跳ね返される、と思いましたが、全力で打てば奇跡的に六本の脚の間をすり抜けるかも!キーパーだって弾くかも!と思って、全身全霊、全血圧を球に乗せる勢いでシュート体制に入り、相手の三人も鬼の形相で体を投げだし、シュートコースをふさぎにきました!

しかし僕は、右ひざがすっぽ抜けるかと思うくらい見事に空振りし、転がったボールを細身の女子バレーボールの選手(サッカー男子日本代表)がフリーで蹴りました。

両手をWにしてのお嬢様キックで体格通りのか弱いシュートでしたが、飛んだコースが良く、キーパー一歩も動けず、ボールはゴールに吸い込まれました。

僕は空振りした恥ずかしさも忘れて、歓喜の輪のなかで女子バレーの選手と抱き合いましたが、あまりに細身で、強く抱きしめすぎると背骨が折れないか心配でしたし、血圧が上がってしんどくなりました。


結局僕はサッカー日本代表のピッチで、一度もボールに触ることなく、最初で最後のシュートチャンスを空振りしたわけですが、気迫でディフェンダー三人を引きつけ、女子バレーの選手をどフリーにしたということで、

世紀のスルーパス

として、世間は騒ぎました。

43歳にして代表デビューした僕ですが、世紀のスルーパスをのこして引退しました。

悔いはありません。



夢見の感想

全力でことに当たれば、失敗してもなんらかしらの結果や評価が残るんだなと思いました。
それにしても、いつから女子バレーの選手がピッチにいたのか定かではありません。
しかも女子バレーのユニフォーム着てたし。
なんか首が細くてヘディングできないって言ってました。
43歳高血圧で走れない選手と女子バレーの選手がツートップのサッカー男子日本代表って、やだな。


……………
塩見多一郎
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